
革新的な非対称デッキ船型の開発
転覆から自動復元する次世代の船舶設計
「転覆しても自ら復元する船をつくれないか?」──この極めて難しい課題に対し、従来の常識にとらわれない発想で挑みました。船体の復元性能に大きく影響するのは「重心の低さ」とされていますが、同じ重心位置でも船型の工夫によって性能を飛躍的に向上できる可能性があることを見出したのです。
その鍵となったのが、“非対称デッキ”という革新的なアプローチです。通常、船舶は左右対称であることが設計上の常識。しかし、あえてこの常識を破り、水面下の船型は左右対称のまま、デッキ部のみを左右非対称に設計。これにより片側の回復性能が向上し、船体が転覆した際に常に同一方向へとロールすることで、より安定して復元する挙動を実現しました。
従来であれば「片側の復元性能が低下するのでは?」と懸念される左右非対称デザイン。しかし、本船型では「どちらから波を受けても、常に同じ方向にロールして復元する」という設計思想に基づき、シンプルかつ効果的な自動復元メカニズムを実現しています。
最適な非対称バランスを導くため、重心位置やデッキ高さなど多くのパラメータをもとにCFD(数値流体解析)を駆使し、理論と実証を繰り返しながら設計ノウハウを確立しました。
CFDシミュレーションで証明された高い復元性能
CFDによるシミュレーションでは、転覆状態にある船体が規則波を受けてどのように復元するかを解析。波高と波長の比(h/λ)という波の勾配を指標に、より小さな波で復元できることが理想とされる中、本非対称デッキ船型は圧倒的な性能を示しました。
CFDシミュレーションでは、全長3mの左右対称型と非対称型を用い、波高0.5mの波を与えたところ、左右対称型は復元しないのに対し、非対称型は確実に自動復元を実現。波がどちら側から当たっても、デッキ形状の影響により常にデッキが張り出していない方向へロールし、復元動作が誘導されることを確認しました。また、回復後に勢いで再度転覆する可能性を、張り出したデッキが勢いを止める効果も確認されました。さらに、復元限界の探索では、左右対称型が復元するのは波高0.8mという波が崩れる限界的な条件であった一方、非対称型では半分にあたる波高0.4mでも復元を達成。この結果は、非対称デッキ設計の圧倒的な優位性を示しています。
自律航行無人船(ASV)への実用展開
この革新的な非対称デッキ船型は、ASV(自律航行型無人船)の開発を進めるOceanic Constellations社との共同プロジェクトにおいて実際に採用され、具体的な船体開発が進行中です。(特許取得済)
非対称デッキ船型は、「転覆からの自己復元」というこれまでにない新たな信頼性を船舶設計にもたらします。これは、未来の無人船舶などへの応用が期待される、まさに次世代の船型コンセプトです。

対称船型
(h=0.5m λ=6.2m)

対称船型
(h=0.5m λ=6.2m)
非対称船型(左舷から波)
(h=0.5m λ=6.2m)

対称船型
(h=0.8m λ=6.2m)


